【時かけクマ子】第1章④ 大失敗から古代へ

――今研究しているこのウォッチが私にとって最後のウォッチ……になるかもしれないのか……。


先日ラントにも指摘された自身の研究目的の自立――

たくさん考えてみたけれど、まだ自分の中で答えは出ていない。


これからの自分がやっていきたい研究テーマを考えるのにはしばし時間がかかると考えたクマ子は、

先に現在研究途中だったウォッチを仕上げることにした。

今日はその試作品を、一度目のテストとしてクマ子自ら使用してみる予定だ。


試作品――

この学園の地下に眠っていた強大な古代の力――マタロウが封じ、取り込んでいる空亡について研究したときに得られた力を応用できないかと試作したウォッチだ。


妖魔界とともにほぼ全ての妖怪が滅ぼされても――滅びなかった、古代から何千年も存在する不滅の大妖怪。

高等部との戦いの時にクマ子も一度だけ見たことがある。

離れたところにいた普通の人間であるクマ子でさえその恐ろしい化け物の存在感に背筋が凍った。

まるで古代から今まで蓄積した世界中の憎しみ・絶望・憤怒といった絶大な負の力が具現化した存在なのではないかと思うほど凶悪な存在感を放っていた。


(あの怨念の妖怪……強大な負のパワーも凄まじいけど、私の研究によると空間や時間に干渉する力があるのよね。)


その力に目をつけ、データとして取り込み、応用させたのが今回の試作品だ。


「この時計、ちょっとばかりいや〜な気配がするですねぃ……」

テストメダルとしてこのウォッチに入れられる予定のモモが、珍しく怪訝な表情で机に置かれた試作品を見ながらぷるぷるしている。


「ふふ、そう言わないで協力してよ、モモ。後でチーズはずむから。」

「ほんとですねぃ!?女に二言はないですねぃ?むむぅ……わかったですねぃ。」


「ゴーダ……ゴルゴンゾーラ……モッツァレラ……」

チーズの名前をつぶやいてやる気を出そうとしているモモ。

ちょっとお高くつきそうね……と財布の中身を心配するクマ子だった。


「クマ子さん、そろそろ試作品のテスト、始めます?」博野に声をかけられ、

「そうね。じゃあ今からやってみるね」

「うわあ〜ドキドキします!まずはクマ子さんがモモンガレディでテストするとのことですが、ヒーローの見た目も変わるんですか?」

博野はヒーローマニアでもある為、ヒーローの見た目に関しても期待している。

彼にとってはヒーローのビジュアルも重要なパロメーターなのだ。


「ううん、今回は能力だけ調整してみたの。」

期待に沿えず、若干申し訳ない。

「そ、そうですか…」と

若干テンションを落とす博野に

「う〜ん……うまくいけば、見た目についてもバージョンアップできるようにするから!」

と宥めるクマ子だった。



「――では試作品のテスト、始めます!」

Y研メンバーの前でクマ子が自らを使ってのテストをスタートした。

「お願い、モモ!――変身」

そう言った途端、モモは妖気の炎に包まれ、妖怪メダルになる。

何度も練習した二人の力を合わせた変身である。


そうしていつものようにモモのメダルを入れるも、突然腕から発した紫色の強い光に弾かれ、メダルが飛び出してきた。

「えっ!?変身メダルが……弾かれた?」

そしてメダルを弾いた後そのまますぐに収まるかと思った光は「ゴォォ」と大きな音を出しながらどんどん強みを増していく。

まさか……こんな反応が出るなんて完全に想定外であった。

(ウォッチが暴走してる!?まさか最後のウォッチで失敗……なの……?)

クマ子のまわりを包む光のエネルギーはどんどん強く大きくなっていく。


それと同時にクマ子の危機感も増していく。

(失敗……というかこれは……大失敗の類じゃ……まずい!)

「みんな!離れて!」

叫ぶや否や、そのままクマ子の体は体と同じくらいの大きさになった強い光に取り込まれ……

――


自分の周りから段々とエネルギーが消える気配がして、ウォッチの暴走がやっと終わったのかとクマ子は目を開けた。

目を開けると――目の前の大きな窓から強い光が差し込んできた。


ここは……生徒会室?

中央に大きな窓があったから一瞬だけそう思った


だがすぐに生徒会室とは全く正反対の色彩が目に飛び込んできた。

荘厳な赤色の壁、そして中央の煌びやかな金色の枠に囲まれた大きな窓。

その大きな窓の中央に位置するように置かれた玉座は、本当にここに王が座るのだろうと、王政など何も知らないクマ子にすらそう思わせる威厳がある。


「こ……ここは一体……?」

驚きのあまり、ぐるりと見渡す。

頭にツノを生やした見慣れない異質な存在が多数、驚きの表情でクマ子の方を凝視していることに気づいてギョッとする。


(な、何!?この人たち……頭にツノが生えてる……まさか宇宙人……?)

そのうちの一人が大きい声をあげる。


「き、貴様!いったいどこから侵入した!姫を狙う刺客か!?」


――*(蛇足)*――

変なウォッチに入れられましたがモモは無事ですw


元々、生徒会と朱夏の城の構造がそっくりであること、暴走魔天空亡が学園の地下で眠っていたこと、Y学園のみんなは現在人間だけどみんな元は妖怪であったこと

それらを考えて、もしかしたら大昔、Y学園は妖魔城だったってこともあったりして、、、?って妄想したのがきっかけでこのトンデモ話を思いついたんですねぃ。


Novel

挿絵付きの小説ページです。 小説は初めてなので文章が下手くそで恐縮ですが読んでいただけると嬉しいです。

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